お客様との大切なコミュニケーションにメールは欠かせませんが、「送ったはずのメールが、なぜかお客様に届いていない」という経験、ありませんか?
近年、サイバー犯罪が巧妙化するにつれて、GoogleやMicrosoftといった主要なメールサービスプロバイダーは、受信ボックスのセキュリティを大幅に強化しています。
これは、悪意のあるメールからユーザーを守るための、非常に重要な進化です。しかし、この強化が、皆さんの大切なお客様へのメールが「届かない」主な原因の一つになっているのです。
強化されるメールセキュリティの背景
かつてのメール環境では、送信元を偽るなりすましメールや、悪質なサイトへ誘導するフィッシング詐欺メールが横行し、多くの被害が出ました。
このような状況を受けて、Googleなどのメールプロバイダーは、受信するメールの信頼性を徹底的にチェックするようになりました。
(1) 急増するサイバー攻撃とメールの役割
近年、ビジネスにおけるサイバー攻撃は増加の一途を辿っています。特に、メールは
- マルウェアの配布
- ランサムウェアの感染
- 機密情報の窃取
といった様々なサイバー犯罪の主要な侵入経路となっています。
攻撃者は、巧みな手口で正規の企業やブランドになりすまし、疑うことを知らないユーザーを騙して情報を引き出そうとします。
具体的な手口としては、取引先や上司になりすまして偽の請求書を送付するビジネスメール詐欺(BEC)、特定の個人や組織を狙い撃ちにするスピアフィッシングなどが挙げられます。
これらの攻撃は、単に情報を盗むだけでなく、企業の評価を傷つけ、事業継続を困難にさせるほどの被害をもたらすことがあります。
なぜメールがこれほど主要な攻撃経路となりやすいのでしょうか?
それは、メールがビジネスにおいて普遍的に使われるコミュニケーションツールであり、人間の心理的な隙を突きやすいからです。
メールプロバイダーは、このような脅威からユーザーを守るため、セキュリティの「最後の砦」としてその役割を強化しています。彼らは、受信する全てのメールに対し、ゼロトラストの考え方で厳しく審査しているのです。
(2) 厳格化する受信ボックスの「審査基準」
例えるなら、宅配便の荷物が届いた時、送り主が本当に実在するのか、中身に変なものが入っていないか、荷物自体が途中で改ざんされていないかまで、厳しく検査するようになったようなものです。
この「検査」が厳しくなればなるほど、少しでも疑わしいと判断されたメールは、お客様の受信ボックスに届く前に迷惑メールフォルダに振り分けられたり、最悪の場合、配信自体が拒否されたりしてしまうのです。
この「審査基準」は非常に多岐にわたり、日々更新されています。主要な判断基準としては、以下のような要素が挙げられます。
送信元のIPアドレスの評価
過去にそのIPアドレスから大量の迷惑メールが送信されていないか、ブラックリストに登録されていないか。
送信ドメインの評価(ドメインレピュテーション)
メールの送信元ドメイン(例:@brandkeeper.jp)が、過去に迷惑メール送信に使われていないか、セキュリティ設定が適切か。
送信者の認証情報
SPF、DKIM、DMARCといった送信ドメイン認証が正しく設定され、認証に成功しているか。これらの認証が不十分だと、なりすましの可能性が高いと判断されます。
メールの内容
件名や本文に迷惑メールによく使われる単語が含まれていないか、不自然なリンクがないか、過度に大きい画像やファイルが含まれていないかなど、コンテンツの内容も詳細に分析されます。
最近では、AI(人工知能)や機械学習がスパムフィルターに導入され、より高度な判断が行われます。
受信者からのフィードバック
受信者がメールを迷惑メールとして報告したり、受信拒否設定をしたりする頻度。これは、送信元ドメインやIPアドレスの評価に直接影響します。
エンゲージメント率
メールが開封されているか、リンクがクリックされているかといった受信者の反応は、メールプロバイダーの評価に大きな影響を与えます。
エンゲージメントが低いと、そのメールはユーザーにとって価値がない、あるいは不要なものと判断される可能性があります。
かつては問題なく届いていたはずのメールが、ある日を境に届かなくなるのは、これらの審査基準が日々更新され、より厳しくなっているためです。
例えば、2024年2月にGoogle、2025年5月にはMicrosoftが大量送信者に対してSPF・DKIM・DMARCの認証義務化や、ワンクリックでの購読解除機能の実装を求めるなど、新たなガイドラインを導入し、業界全体に大きな影響を与えています。 さらに、2025年11月からはGmailも、非準拠の大量メールを「警告」だけでなく、配信自体を拒否する方向に移行しています。つまり、「送ったはずのメールが届かない」だけでなく、「送信エラーが発生して、そもそも配信できていない」ケースも現実のリスクとなっています。
「届かない」がもたらすビジネスへの影響
メールがお客様に届かないことは、単に情報が伝わらないだけではありません。その影響は、ビジネスの機会、お客様との関係、そしてブランドイメージにまで及び、長期的な企業活動に深刻な打撃を与える可能性があります。
(1) 直接的な機会損失とROIの低下
新製品やサービスのお知らせ、期間限定のキャンペーン情報、あるいはイベントへの招待など、重要なプロモーションメールがお客様に届かなければ、それは直接的なビジネスチャンスの喪失を意味します。
メールマーケティングに投じた時間、労力、コストが無駄になり、ROI(投資対効果)は大幅に低下してしまうでしょう。
例えば、ECサイトで「本日限定セール」のメールを送ったのに、そのメールがほとんどのお客様に届かなければ、どれだけ魅力的な商品があっても売上には繋がりません。
また、顧客獲得のために多額の費用を投じても、メールが届かなければその努力も水の泡です。結果として、顧客獲得コストが不必要に上昇し、事業全体の収益性を圧迫することになります。
さらに、メール到達率の低下は、メール開封率やクリック率といった重要なマーケティング指標のデータ精度も低下させ、効果的な改善策を立てることを困難にします。
(2) お客様との信頼関係の悪化と顧客体験の損害
お客様は、興味を持ったサービスや製品に関する情報が定期的に届くことを期待しています。現代の消費者は、パーソナライズされた情報が適切なタイミングで届くことを重視しています。
しかし、届くはずのメールが届かなければ、お客様は
- 「情報が来ない」
- 「会社から無視されている」
と感じるかもしれません。これは、お客様の期待を裏切り、結果としてブランドへの不信感や失望感を抱かせる原因となります。
例えば、資料請求をしたのに返信メールが届かない、注文確認メールが来ない、といった事態は、お客様に大きな不安を与え、購入意欲やサービス利用への熱意を大きく削いでしまいます。
一度失われた信頼を回復するのは非常に困難であり、お客様は簡単に競合他社へ流れてしまうでしょう。良好な顧客体験は、お客様との長期的な関係構築の基盤であり、メールが届かないという小さな問題が、やがて大きな顧客離れに繋がることも少なくありません。
さらに、不満を抱いたお客様がSNSなどでネガティブな情報を発信すれば、ブランド毀損が可視化され、より広範な悪影響を及ぼす可能性もあります。
(3) ブランドイメージの低下と信用失墜のリスク
最も避けたいのは、貴社のメールが「悪質なメール」と誤認され、メールプロバイダーやセキュリティベンダーのブラックリストに登録されてしまうことです。
一度ブラックリストに載ると、そのドメインやIPアドレスからのメールは、多くのプロバイダーで自動的にブロックされるようになります。
これは、単にメールが届かなくなるだけでなく、貴社の会社名やブランド名が
「迷惑メールを送信するような信用できない存在」
として認識されるリスクを伴います。その結果として、企業の評価が傷つき、取引先や新規顧客からの信頼も失われる可能性があります。
一度失った信頼を回復するには、多大な時間と労力、そしてコストが必要となります。ブラックリストからの解除プロセスは複雑で時間がかかることが多く、その間もビジネスへの悪影響は続きます。
また、日本の特定電子メール法など、各国の法律で迷惑メールの送信が厳しく規制されており、法令違反となるリスクもゼロではありません。このような信用失墜は、企業の長期的な成長戦略において、計り知れないマイナスとなります。
現代のメール環境を理解し、適切な対策を
メールが確実に届くようにするためには、もはや「メールを送る」だけでは不十分です。
Googleなどの主要メールプロバイダーがどのような基準でメールを評価し、どのようにセキュリティを強化しているのかを深く理解し、それに合わせた戦略的かつ継続的な対策を講じる必要があります。
これは、メール到達率を向上させるための第一歩であり、ひいてはお客様との強固な信頼関係を築き、ビジネスを成功させるための重要な基盤となります。
単に目先のトラブルを解決するだけでなく、予防的なアプローチで継続的にメールインフラの健全性を保つことが、現代のメールマーケティングには不可欠です。適切な対策は、貴社のメールが「届く」だけでなく、お客様に「信頼される」ようになるための投資なのです。
現代のメール環境を正しく理解し、適切な対策を講じることで、皆さんのメールは確実に届き、お客様との関係をさらに深める力となるでしょう。
この知識が、皆さんのメール戦略を次のレベルへと引き上げるきっかけとなれば幸いです。
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Brandkeeperでは、メールセキュリティの専門家チームによるDMARCの導入から運用サポート及びコンサルテーション行っています。一旦はDMARCの導入をやってみたが運用を断念したお客様、または、導入時点でいくつものハードルであきらめた企業様のサポートも行っています。
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